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河内貯水池で、冬の気配を探して― 静けさを拾う日 ―

北九州市にある河内貯水池の堰堤
目次

北九州市にある隠れた名所 ― 河内貯水池 ―

12月上旬。天気予報は晴れ。そしてその通り、雲ひとつない快晴の空が広がっていました。北九州市八幡東区にある河内貯水池は官営八幡製鉄所の鉄鋼増産態勢に対応するため、需要が増大する工業用水確保を目的として、1919年に着工、1927年に竣工した歴史ある貯水池です。周囲の自然が非常に豊かで、森と湖の境界がゆっくりと溶け合うような場所です。春は桜、夏は新緑、秋が紅葉と、季節の移ろいを楽しめる名所ですが、人が多すぎないこともあって歩くたびに空気がすーっと静かに落ち着いていくんですよね。

北九州市にある河内貯水池の堰堤からみた風景

前述した通りここは紅葉の名所としても知られているけれど、僕にとってはそれ以上に “静けさ”をくれる場所です。水面の揺れ、山の陰影、人の少ない散策道。そこには、撮りに来た者にしか分からない「空気の密度」があります。この日、残念ながら紅葉はピークを過ぎていて、鮮やかさという意味では少し物足りなさもありました。それでも、静けさがすべてを埋めてくれていて、歩いているだけで心が整っていくようなそんな時間でした。

静けさが形になる場所

北九州市にある河内貯水池の堰堤

河内貯水池に着くと、まず目に飛び込んでくるのはまっすぐに伸びる堰堤の道。人の気配がほとんどなく、影がまっすぐ奥まで伸びていくその道は、静寂そのものが形になったような佇まいでした。風が止まると水面がふっと落ち着き、ほんのわずかな波紋までくっきりと見えてくる。その瞬間に立ち会えるのが河内貯水池のいいところです。

北九州市にある河内貯水池の堰堤

写真を撮っているというより静けさを拾っている感覚です。シャッターの音だけが小さく空気に吸い込まれていく。そんな時間がただただ心地よかったです。

北九州市にある河内貯水池の堰堤
北九州市にある河内貯水池の堰堤

FE 24-70mm F2.8 GM IIで“静けさ”を撮る

この日はα7R VにFE 24-70mm F2.8 GM IIを一本だけ持って行きました。

北九州市にある河内貯水池の風景

広角で見た景色は青と緑が気持ちよく伸びていて、標準域では山肌の陰影がしっとりと写る。望遠寄りにすると紅葉の名残が光に照らされて浮かび上がる。ピークの紅葉ではなかったけれど、静けさを感じたい日ならこのくらいの控えめな色づきがむしろちょうどいい。自己主張が強すぎない景色は光の変化をしっかり映してくれるからです。

北九州市にある河内貯水池の堰堤

今回使用した機材のレビューはこちら

南河内橋 ― 湖に映る赤いアーチ

北九州市にある河内貯水池の南河内橋

河内貯水池のランドマークのひとつが、湖の中央をまたぐように架かる赤い橋「南河内橋」です。この橋は1926年に完成したトラス橋で、鮮やかな赤が山の緑と湖の青に映えてとても美しいです。存在感があるのに水辺に映ると不思議と穏やかで、景色に優しく溶け込んで見えます。周囲が静かだからこそこの赤色の強さが“騒がしさ”ではなく“アクセント”として響くんですよね。写真に写っているのは橋の形や色だけれど、本当に撮っているのはその場の“空気のトーン”なんだと思います。

北九州市にある河内貯水池の南河内橋

少しだけ残った紅葉が、季節の境目を教えてくれた

貯水池の奥のほうへ歩いていくとほんのわずかに残った紅葉が光を受けて静かに浮かび上がっていました。全体としてはもう冬へ向かっている景色。しかし、その中に少しだけ残った色があることで季節が一気に切り替わったわけではないことに気づかされます。紅葉が主役になるほどの派手さはないけれど、この控えめな存在感がこの日の空気によく合っていました。紅葉の名所を訪れたはずなのに鮮やかさよりも季節が移り変わる途中にあること自体を写真に残したくなったのかもしれません。

北九州市にある河内貯水池の紅葉

歩いて一周するという選択

河内貯水池にはサイクリングセンターがあって貸自転車で池のまわりを一周することもできます。けれど今回はあえて歩くことにしました。時間にしておよそ1時間半。写真を撮りながらだったので少し長めだけれど、ウォーキングが目的ならもっと短い時間で回れると思います。歩数は約2万歩。普段は運動不足なので、帰宅してから足がパンパンでした(笑)。それでも、不思議と「疲れた」という感覚よりも、「ちゃんと歩いたな」という心地よさのほうが強く残りました。

空気の密度を、身体で感じる

歩いていると、河内貯水池の空気が少しずつ身体に染み込んでくるのが分かります。とにかく空気の密度が濃い。音が少なく風が穏やかで、深呼吸したくなるような静けさがあります。写真を撮るために立ち止まる時間も、歩いて景色を流していく時間も、どちらも同じくらい大切に感じられました。ただそこを歩いているだけなのに、頭の中が少しずつ整理されていく。河内貯水池にはそんな不思議な力があります。

北九州市にある河内貯水池の風景

「こんにちは」だけの、ちょうどいい距離感

河内貯水池のまわりは、基本的に人は多くありません。けれど、まったく誰とも会わないわけでもない。
ウォーキングをしている人。
同じようにカメラを持って歩いている人。
ときどきすれ違って、軽く会釈を交わす。
「こんにちは」
それだけで終わる関係だけれど、その一言がとても心地よく感じられました。それぞれがそれぞれの静かな時間を過ごしていて、干渉しすぎず、でも完全に無関心でもない。この距離感が僕はとても好きです。

北九州市にある河内貯水池の中河内橋

色と音に包まれながら歩く

歩き続けていると視界の中にある色が少しずつ変わっていきます。
一面に広がる池の青。
ところどころに残った紅葉。
山の深い緑。
そこに重なる、鳥の鳴き声。
どれか一つが強く主張するわけではなく、すべてが同じトーンで静かにそこにある。そのバランスがとても心地いいんですよね。シャッターを切るたびに、「きれいだな」よりも先に「落ち着くな」と思っている自分がいました。

北九州市にある河内貯水池の風景

おわりに ― 静けさを持って帰る

帰宅後に撮った写真を見返していて気づいたことがあります。どの写真にも写っていたのは紅葉の色でも青空の鮮やかさでもなく“静けさ”そのものでした。
完璧な紅葉じゃなくてもいい。絶景じゃなくてもいい。
静けさの中に身を置いて、いいと思った瞬間だけ切り取れたならそれで十分。河内貯水池は、そんな気づきをくれた一日でした。

北九州市にある河内貯水池の太鼓橋
タカフミ
主に地元北九州で写真を撮っている写真愛好家です。日常の中で「ふと立ち止まりたくなる景色」や「なんとなく心が動く瞬間」にレンズを向けています。このブログを通して多くの人に写真の楽しさを伝えていきたいです。
北九州市にある河内貯水池の堰堤

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この記事を書いた人

タカフミのアバター タカフミ 写真と暮らしを綴る人

主に地元北九州で写真を撮っている写真愛好家です。日常の中で「ふと立ち止まりたくなる景色」や「なんとなく心が動く瞬間」にレンズを向けています。このブログを通して多くの人に写真の楽しさを伝えていきたいです。

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